麻酔の一般的な取り扱い

取り扱い関係

番号区分項目名取扱い根拠・ポイント
38麻酔胸郭出口症候群への星状神経節ブロック原則認める血流増加が症状改善に有効。ペインクリニック治療指針等でも示されている。
78麻酔閉鎖循環式全身麻酔「2」条件付きで認める肺切除や縦隔腫瘍は分離肺換気のためOK。乳癌手術や肝マイクロ波凝固は不可。
106麻酔デクスメデトミジンの算定原則認める硬膜外・脊椎・伝達・局所麻酔時、及びDPCでの非挿管手術時の鎮静目的での投与は、添付文書や臨床試験に基づき妥当。
125麻酔笑気ガスの使用量1分間当たり4Lまで閉鎖循環式全身麻酔時、安全な酸素濃度を維持するためには、フレッシュガスの流量上限6Lに対し笑気は4Lが上限となるため。
190麻酔全身麻酔時のタリビッド眼軟膏等原則認めない適応は眼科周術期の無菌化。眼科以外での乾燥防止目的は適応外。ただし脳外科等で部位が合致する場合は算定可。
421麻酔小児の骨髄穿刺等における静脈麻酔原則認められる幼小児の安全かつ適切な検査・撮影のために意識消失(静脈麻酔)が必要な場合がある。
422麻酔脊椎麻酔時等のリドカインテープ(ペンレス)原則認められない脊椎麻酔やゾラデックス投与時の疼痛緩和は添付文書の効能・効果に含まれない。
471麻酔成人の内視鏡検査時の静脈麻酔原則認められない通常は抗不安薬で対応可能。意識消失を目的とする全身麻酔(静脈麻酔)の必要性は一般的ではない。

支払基金・国保統一事例:麻酔項目の算定基準と医学的妥当性の解説

1. 麻酔審査の基本原則:安全管理と医師の専従性

麻酔の診療報酬審査において最も重視されるのは、**「患者の安全がいかに管理されていたか」**という点です。麻酔は単に痛みを取る行為ではなく、侵襲の大きな手術において呼吸・循環を維持する高度な医療行為であるため、その手技料や管理料の算定には、麻酔科医(特に麻酔科標榜医)の専門的な関与が不可欠な条件となります。

審査では、手術記録および麻酔チャート(麻酔経過図)に基づき、麻酔の開始から終了までの時間が適正か、また使用された薬剤が患者の全身状態に見合っているかが精査されます。


2. カテゴリー別:麻酔の算定ポイント詳説

① 麻酔管理料(I・II)の算定要件と審査

麻酔管理料は、麻酔科標榜医が自ら、またはその指導の下で麻酔を管理した場合に算定できる「質」を評価する点数です。

  • 専従性の確認:
    • 原則: 麻酔管理料(I)などは、麻酔科医がその症例に専従していることが求められます。同時に複数の部屋で麻酔を並行して管理している場合、その管理体制が施設基準に合致しているかが審査の焦点となります。
  • 麻酔チャートの不備:
    • 審査ポイント: バイタルサインの記録が極端に少なかったり、麻酔の導入・維持・覚醒のプロセスが不明瞭な場合、管理料全体の算定が否定される(査定される)リスクがあります。

② 全身麻酔(L008)の算定と時間管理

  • 麻酔時間の定義:
    • 原則: 麻酔時間は「麻酔の導入(薬剤投与やマスク換気の開始)」から「患者が麻酔から離脱(抜管や覚醒の確認)」するまでを指します。
    • 審査ポイント: 手術時間(皮膚切開から閉腹まで)と麻酔時間の差が過度に大きい場合、その理由(導入の困難、術後の覚醒遅延など)の詳記が求められます。
  • マスク・気管内挿管による違い:
    • 気管内挿管を伴う全身麻酔は、より高度な管理を要するため点数が高く設定されています。解剖学的な理由で挿管が困難(Difficult Airway)であった場合の特殊な処置などは、別途評価の対象となります。

③ 硬膜外麻酔・脊椎麻酔(下半身麻酔)

  • 術後鎮痛との関係:
    • 原則: 手術中に使用した硬膜外カテーテルをそのまま残し、術後鎮痛(持続的注入)を行う場合、その薬剤料や管理料の算定区分が精査されます。
  • 併用麻酔:
    • 全身麻酔と硬膜外麻酔を併用する場合、それぞれの必要性(術中の完全な除痛と術後の早期離床など)が医学的に妥当であれば認められますが、術式によっては一報が包括されるルールに注意が必要です。

④ 神経ブロックと静脈内鎮静法(L002等)

  • 静脈内鎮静法(プロポフォール等):
    • 審査ポイント: 近年、内視鏡検査や歯科手術、局所麻酔手術での鎮静ニーズが高まっています。しかし、単なる「不安解消」目的ではなく、体位保持が困難な場合や侵襲が伴う場合など、医学的必要性が問われます。
  • 超音波ガイド下神経ブロック:
    • エコーを用いて神経の走行を確認しながら行うブロック注射は、その精度の高さから加算が認められます。画像保存などの要件を満たしているかが確認されます。

3. 麻酔薬および特定保険医療材料の審査

  • 薬剤の適応外使用(事例106関連):
    • 例: デクスメデトミジン(プレセデックス)の局所麻酔下手術における使用。
    • 判断: かつてはICU管理に限定されていましたが、現在は手術中の鎮静目的でも広く認められるようになっています。ただし、用法・用量が添付文書の範囲内であるか、または医学的根拠があるかが重要です。
  • 気管内チューブおよびカテーテルの数量:
    • 1症例につき、明らかに過剰な数の消耗品が請求されている場合、紛失や失敗を疑われ、理由がない限り1本分に査定されることがあります。

4. 審査を通過するための実務的対応:記録の質と透明性

麻酔のレセプトにおいて、査定を回避するためのポイントは以下の通りです。

  1. 麻酔記録の正確な反映:
    • レセプトに記載する麻酔時間は、分単位で麻酔記録と一致させます。また、長時間に及ぶ手術(8時間を超える場合など)の加算を算定する際は、その不可避性を手術記録と連動させて示します。
  2. 合併症への対応の詳記:
    • 術中に不整脈や急激な血圧変動があり、特殊な薬剤(強心剤や降圧剤)を頻回に使用した場合、その病態の変化を短くコメントすることで、薬剤料の過剰請求とみなされるのを防げます。
  3. ASA全身状態分類の意識:
    • 高齢者や合併症(心疾患、腎不全など)を持つ患者に対する麻酔管理料の加算(酸素吸入など)を算定する場合、患者の基礎疾患がいかに管理に影響したかを明記します。

5. まとめとリスク管理

「支払基金の統一事例」における麻酔の取扱いは、**「高リスクな行為に対する適正な評価」「漫然とした高額薬剤使用の抑制」**のバランスの上に成り立っています。

麻酔科医不足という社会背景もあり、審査においても「誰が実施したか」という人的要件は今後も厳しくチェックされる項目です。医療機関としては、麻酔科医の確保だけでなく、看護師や臨床工学技士とのチーム医療の記録を残し、**「麻酔の安全性がいかに担保されていたか」**を客観的に証明できる体制を整えることが、適正な報酬を得るための最大の対策となります。

また、術後鎮痛(PCA等)の普及により、手術室を出た後の管理も点数化されています。手術から病棟へのシームレスな痛みの管理を「管理料」として正しく請求できるよう、記録の標準化を進めることが望まれます。

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