注射の一般的な取り扱い

取り扱い関係

番号区分項目名取扱い根拠・ポイント
19注射淋菌感染症へのロセフィン等原則認める経口薬への耐性菌問題があるため、第一選択薬としての注射薬投与は妥当。
20注射急性肝炎等へのプロスタンディン500μg原則認めない500μg製剤は外科手術時の低血圧維持等に特化した製剤であるため。
23注射DIC患者へのイントラリポス原則認めない副作用として凝固能亢進により病状悪化のおそれがあるため、DIC患者には禁忌に近い。
25注射肝疾患へのGI療法(グルカゴン等併用)原則認めない他に確立した治療法があるため。ただし劇症化の恐れがある場合などは詳記で判断。
34注射膀胱洗浄時のアミカシン等原則認めない抗菌薬による膀胱洗浄は尿路感染の頻度を減少させない。有効性が未確立で用法外。
62注射中心静脈へのヘパリンロック原則認める留置ルート内の凝血防止目的として、ロック用シリンジ等の算定が認められる。
63注射ヘパリンロックの使用量制限1日2〜4筒まで10単位製剤は1日4筒、100単位製剤は1日2筒までが原則(添付文書の基準)。
64注射シナジス(パリビズマブ)原則認めない発症抑制(予防)はOKだが、既に発症した後の「治療」や乳幼児以外への投与は不可。
65注射エルカトニン40単位の適応原則認めない40単位は高Ca血症・骨ページェット病用。骨粗鬆症には10・20単位を用いること。
95注射強ネオ(強力ネオミノファーゲン)原則認めない慢性肝疾患がない「肝癌」や「脂肪肝」のみでは、適応(慢性肝疾患)外。
174注射めまい・難聴へのグリセオール注原則認めない適応は頭蓋内圧亢進、脳浮腫、眼内圧下降等。めまいや突発性難聴、不均衡症候群のない透析への使用は適応外。
175注射アセリオ・トラマールとロピオンの併用原則認めるロピオン(NSAIDs)、アセリオ(中枢性)、トラマール(オピオイド)は各々作用機序が異なり、併用効果が認められるため。
176注射エダラボンとオザグレル・アルガトロバンの併用原則認める脳保護薬(エダラボン)と抗血小板・抗凝固薬は作用機序が異なり、脳梗塞急性期における併用は有用であるため。
197注射強力ネオミノファーゲンシーの使用量原則40mLまで添付文書では1日5〜20mL(適宜増減)。皮膚疾患(湿疹・じんま疹等)に対し増量する場合でも40mLまでが適切。
198注射グラン・ノイトロジンの算定(原疾患なし)原則認めない好中球減少症は原疾患に付随する病態。インターフェロン投与時の病名漏れや、原因となる原疾患の記載がない場合は不可。
199注射アバスチンの単独投与(神経膠腫以外)原則認めない悪性神経膠腫以外では他剤との併用が原則。ただし卵巣癌で併用療法終了後に継続投与を行う場合は単独でも認められる。
244注射PPIの内服薬と注射薬の併用原則認められない同一薬剤の併用注射薬は「経口投与不可能」な患者が対象。
245注射アミノレバン点滴静注等原則認められる肝硬変かつ高アンモニア血症肝性脳症の病態である蓋然性が高いため。
245注射アミノレバン点滴静注等原則認められない肝硬変(単独)、慢性肝炎など一般的に肝性脳症の病態とは考えにくい。
246注射PPI(注射薬)原則認められない逆流性食道炎、出血のない胃潰瘍、胃癌「経口投与不可能な出血を伴う胃潰瘍等」が対象。
278注射含糖酸化鉄注射液認められない-腎性貧血、慢性透析患者、貧血(原因不明)適応は鉄欠乏性貧血。腎性貧血はエリスロポエチン低下が主因であり、鉄欠乏が確認されない限り不可。
279注射グルカゴン・インスリン療法認められない-肝癌肝細胞再生促進効果を期待するものであり、肝癌に対する医学的有用性は認められない。
309注射オクトレオチド認められない-重症急性膵炎、膵液瘻急性膵炎ガイドライン等において、有効性が示されていない。
310注射ハロペリドール(注射)認められない-癌性疼痛の鎮痛、認知症の不眠症適応は統合失調症・そう病。鎮痛や不眠に対する使用は適応外。
311注射アルプロスタジル(パルクス等)認められる人工透析中の閉塞性動脈硬化症、潰瘍なしの慢性動脈閉塞症-冷感・しびれ・間欠性跛行などの有症状に対して薬理学的に有効。
311注射アルプロスタジル(パルクス等)認められない-人工透析実施のみ動脈閉塞症の合併がない場合は認められない。
344注射膵炎に対するナファモスタットメシル酸塩の投与量1日40mgまで認められる通常量20mgに対し症状に応じた適宜増減の範囲として40mgまでを許容。
345注射関節腔内注射時のヒアルロン酸Naとリドカインの算定原則認められる作用機序が異なり(潤滑・保護と速効性鎮痛)併用の有用性が高い。
346注射メニエール病に対するデキストラン40の算定原則認められない添付文書にメニエール病の適応がない。
392注射消化管出血がある患者に対するメトクロプラミドの算定原則認められない消化管運動亢進作用により、出血を悪化させるおそれがある。
393注射経口投与可能な場合の上気道炎等へのブロムヘキシン注の算定原則認められない注射薬は経口投与困難な場合等が原則。
416注射ガベキサートとナファモスタットの併用原則認められない共に合成プロテアーゼインヒビターであり、同様の作用(抗凝固等)を有するため過剰。
417注射ガベキサート等とウリナスタチンの併用(膵炎+DIC)原則認められる作用機序が異なり(合成vs多価阻害)、重症化した膵炎・DICの病態改善に有用。
464注射5-FU/MTX交代療法時の炭酸水素Na原則認められるメトトレキサートによる尿の酸性化・腎障害を防止するため、尿のアルカリ化が必要。
465注射角膜移植術後のシクロスポリン原則認められる拒絶反応の抑制に有用。添付文書に「角膜」の明記はないが、作用機序から拒絶反応への投与は妥当。
466注射インターフェロン製剤の不適切病名原則認められないアルコール性、自己免疫性、非代償性肝硬変、肝不全合併例への投与は、効果が期待できず適応外。

支払基金・国保統一事例:注射項目の算定基準と医学的妥当性の解説

1. 注射審査の基本原則:手技の包括と適正投与

注射の診療報酬審査における大原則は、**「同一日に行われた複数の注射手技は、主たるもの(高い点数)で包括される」**という点です。例えば、外来で静脈内注射を行い、その数時間後に点滴注射を行ったとしても、手技料としては点滴注射(または静脈内注射のいずれか高い方)1回分のみが認められるのが一般的です。

また、薬剤については、厚生労働省の承認を受けた「効能・効果」に基づいているかが基本ですが、支払基金の統一事例では、医学的エビデンスに基づく「適応外薬」の認容基準も重要な審査対象となっています。


2. カテゴリー別:注射の算定ポイント詳説

① 手技料の算定ルール(点滴・静脈内・筋肉内)

  • 点滴注射(G004):
    • 原則: 1日につき1回の算定です。朝と晩で2回回路を接続し直しても、手技料は1回分となります。
    • 審査ポイント: 6歳未満の乳幼児に対する「乳幼児加算」や、重症者に対する「精密持続点滴注射加算」などの算定において、指示記録や実施時間の整合性がチェックされます。
  • 静脈内注射(G001)と筋肉内注射(G000):
    • 妥当性の判断: 同一の薬剤が静脈用と筋肉用の両方の承認を持っている場合、あえて静脈内注射を選択した理由(緊急性や吸収速度の必要性)が問われることがあります。

② 特定保険医療材料と注射の併算定

  • 翼状針や留置針の算定:
    • 原則: 注射手技料には、一般的な注射器や針の費用が含まれています。しかし、特定の条件(点滴注射の持続など)において使用される「留置針」については、特定保険医療材料として別途算定可能です。
    • 審査ポイント: 使用個数が実施回数に対して過剰でないかが精査されます。

③ 抗がん剤・高度な薬剤の注射(化学療法)

  • 外来化学療法加算:
    • 算定要件: 専任の医師や看護師の配置、副作用に対する緊急体制、患者への詳細な説明と同意が必要です。
    • 審査の視点: 投与された抗がん剤の種類、投与量(体表面積計算の正確性)、投与スケジュール(レジメン)が、学会のガイドラインや承認されたプロトコルに従っているかが厳格に確認されます。
  • 無菌製剤処理加算:
    • 中心静脈栄養用輸液や抗がん剤の調製において、クリーンベンチ等の適切な環境下で薬剤師が調製を行っている実態が問われます。

④ 生物学的製剤・自己注射

  • 自己注射指導管理料:
    • インスリンやリウマチ治療薬(TNFα阻害薬等)を患者が自宅で打つための指導。
    • 審査ポイント: 導入初期の集中的な指導が行われているか、また処方された薬剤の数量と、次回の来院までの日数が整合しているかが精査されます。

3. 薬剤の適応外使用と審査事例(事例106等に関連)

注射審査における最大の論点は、添付文書の範囲を超えた使用の認容です。

  • 適応外薬の保険診療上の取扱い:
    • 判断基準: 「公知申請」が受理されているものや、支払基金の「審査において認める医薬品(いわゆる「55番通知」関連)」に掲載されているものについては、病名と使用目的が医学的に妥当であれば算定が認められます。
  • 事例:
    • 特発性血小板減少性紫斑病に対する免疫グロブリン製剤の投与など、緊急避難的、あるいは難治性疾患に対して標準的治療として確立しているものは認容される傾向にあります。

4. 審査を通過するための実務的対応:記載と管理

注射のレセプトにおいて、査定を回避するためのポイントは以下の通りです。

  1. 投与経路の明示:
    • 静脈(iv)、点滴(div)、筋肉(im)、皮下(sc)など、実施した経路を正確にレセプトへ反映させます。特に点滴注射については、実施時間(開始・終了)の記録が「精密持続点滴」等の加算算定において決定的な証拠となります。
  2. 体重・体表面積の記録:
    • 小児の薬剤投与や抗がん剤の算定においては、用量設定の根拠となる体重や体表面積のデータをレセプトの備考欄や詳記に盛り込むことが望ましいです。
  3. 「病名」と「薬剤名」の一致:
    • 薬剤の効能に対応する病名(例:感染症なら「細菌性肺炎」、脱水なら「脱水症」など)が漏れなく入力されているか、医事システム上でのチェックを強化します。
  4. 長期・多剤投与の理由:
    • 多数のビタミン剤や代謝改善薬の混注は、審査において「過剰診療」とみなされやすいため、栄養補給が必要な具体的な全身状態(摂食困難等)を明記します。

5. まとめと最新の動向

「支払基金の統一事例」における注射の取扱いは、**「効率的かつ安全な薬物療法の提供」**を軸としています。

近年では、バイオ後続品(バイオシミラー)の使用促進や、在宅での自己注射の拡大など、医療費適正化に向けた施策が注射領域でも強化されています。審査においても、高額な先発品を漫然と使用するのではなく、医学的妥当性に基づいた薬剤選択がなされているかが、目に見えない形での評価基準となりつつあります。

医療機関としては、看護部門と医事部門が連携し、**「実際に投与された量(バイアル数)」と「請求された量」の差(端数処理の妥当性)**などのコンプライアンスを遵守し、透明性の高いレセプト作成を心がけることが、適正な診療報酬を確保する上での王道となります。

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