病理の一般的な取り扱い

取り扱い関係

番号区分項目名取扱い根拠・ポイント
29病理乳癌診断のセルブロック法(病理組織標本)原則認めない細胞診検体(乳腺穿刺等)を用いた病理組織標本作製は、告示に示されておらず信頼性も不十分。
43病理採取料等の算定がない病理組織標本作製原則認めない病理診断は検体採取とセット。採取料や手術料がないのに標本作製のみの算定は不可。
107病理乳癌への免疫染色(その他)原則認める良性の乳頭腫や繊維腺腫と、悪性の非浸潤性乳管癌との鑑別に筋上皮マーカー等を使用した病理組織標本作製は有用であるため。
191病理虫垂炎に対する病理組織標本作製原則認める年齢にかかわらず算定可。若年者でも小児虫垂神経内分泌腫瘍(カルチノイド)等の可能性があり、鑑別に有用なため。
423病理胃・十二指腸潰瘍に対する病理組織標本作製原則認められる「がんとの鑑別」が必要であるため、組織切片による標本作製は認められる。
442病理痔瘻・痔核に対する病理組織標本作製①可 ②不可①痔瘻は癌化の可能性があるため鑑別に必要。②痔核は癌化の可能性がなく、標本作製の必要性は低い。

支払基金・国保統一事例:病理診断項目の算定基準と医学的妥当性の解説

1. 病理診断審査の基本原則:診断の確定と専門性の評価

病理診断は、採取された検体(組織や細胞)を顕微鏡等で観察し、最終的な確定診断を下す極めて重要なプロセスです。審査においては、単に「検査を行った」という点だけでなく、「適切な診断手技が選択されているか」、および**「病理医による専門的な判断が適切に報酬に反映されているか」**が重視されます。

特に、病院と検査センター(外部委託)の間での役割分担や、診療報酬上の「病理診断料」と「病理組織標本作成料」の区別に誤りがないかが精査されます。


2. カテゴリー別:病理診断の算定ポイント詳説

① 病理組織標本作成(N000)の算定件数

  • 臓器数と件数の数え方:
    • 原則: 標本作成料は「1臓器につき1件」として算定します。
    • 審査ポイント: 例えば、胃から3箇所(前庭部、体部、穹窿部)生検を行った場合、胃という「1臓器」からの採取であるため、原則として1件の算定となります。
    • 例外: 解剖学的に明らかに異なる部位(例:食道と胃、あるいは右肺と左肺など)から個別に検体を採取した場合は、それぞれの件数を算定できますが、その部位の明記が不可欠です。

② 病理診断料と病理診断管理加算

  • 「診断料」を算定できる条件:
    • 原則: 病理診断料(N006)は、医療機関内に配置された医師(病理医等)が診断を行い、報告書を作成した場合に算定可能です。外部の検査センターに検体を送り、センター側で診断が行われた場合は、医療機関側で「診断料」を算定することはできません。
  • 管理加算(I・II)の要件:
    • 放射線科や麻酔科と同様、常勤の病理医の有無や、診断報告書が主治医へ速やかに伝達されている管理体制が施設基準として問われます。

③ 細胞診(N001)と組織診断の併用

  • 併用時の算定制限:
    • 原則: 同一部位に対して、細胞診と組織生検を同時に行った場合、両方を100%算定することは認められないケースが多いです(主たるもののみ、または一方の減算)。
    • 医学的妥当性: 「細胞診で疑陽性であったため、同日に組織生検を追試した」などのプロセスが明確であれば認められることがありますが、ルーチンでの全例併用は査定の対象になりやすい項目です。

④ 術中迅速病理組織標本作成(N003-2)

  • 緊急性と診断価値:
    • 手術中に切除範囲の決定や良悪性の判定のために行われる高度な検査です。
    • 審査ポイント: 実際に行われた手術の術式や時間と整合しているかが確認されます。術後に判明すれば足りるような症例で迅速診断を行っている場合、過剰診療とみなされることがあります。

3. 特殊染色および免疫染色(N002)

  • 免疫染色(エストロゲン受容体、HER2等):
    • 原則: 乳癌や悪性リンパ腫などの診断において、サブタイプを特定し治療方針(分子標的薬の使用など)を決めるために不可欠な検査です。
    • 審査ポイント: 使用した抗体の種類数と、その必要性が精査されます。一度に過剰な種類の抗体を用いた染色は、医学的根拠の提示を求められることがあります。

4. 審査を通過するための実務的対応:報告書と整合性

病理診断のレセプトにおいて、査定を回避するためのポイントは以下の通りです。

  1. 採取部位の具体的な記載:
    • 「生検」という記載だけでなく、「十二指腸生検(下行脚)」「右乳腺生検(C領域)」など、解剖学的部位を詳細にレセプトに反映させます。これにより、複数件数算定の正当性が証明されます。
  2. 臨床診断名(病名)の適正化:
    • 検査結果が「良性」であったとしても、検査時点での「○○癌の疑い」という病名がなければ、悪性を否定するための病理診断の妥当性が認められません。
  3. 外部委託と自院診断の区別:
    • 事務的なミスで、外部センターへ委託した分を自院の「病理診断料」として請求してしまうケースが散見されます。委託先との契約内容と、レセプトの算定項目が一致しているか定期的な点検が必要です。
  4. 「疑義」への回答準備:
    • 希少な腫瘍などで特殊な染色を多数行った場合は、診断報告書のコピーを添付するか、コメント欄に「難治性腫瘍の鑑別のため○種類の免疫染色を実施した」旨を簡潔に記載します。

5. まとめとデジタル病理(WSI)の展望

「支払基金の統一事例」における病理の取扱いは、**「確定診断に至るまでの論理的なステップ」**を評価するものです。

近年では、ガラス標本をデジタル化して遠隔地で診断する「デジタル病理診断」の点数化も進んでいますが、この場合も「誰が、どこで標本を作成し、誰が読影したか」という責任の所在が審査の焦点となります。医療機関としては、臨床医と病理医のコミュニケーション記録(カンファレンス記録など)を整備し、**「病理の結果がいかに治療方針(手術の有無や化学療法の選択)に寄与したか」**を可視化しておくことが、適正な診療報酬を確保する上で極めて重要です。

また、癌ゲノム医療の進展に伴い、病理検体の質管理も問われるようになっています。標本の作成プロセスそのものの妥当性が、結果的に診療報酬の適正な請求に繋がると捉えるべきです。

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