精神科の一般的な取り扱い

取り扱い関係

番号区分項目名取扱い根拠・ポイント
3精神科通院・在宅精神療法の週2回算定記載がない場合は週1回レセプトの摘要欄に「退院日」の記載が必須。他院退院4週間以内でも算定可能だが記載は必要。
280精神科入院・通院精神療法等認められる統合失調症、うつ状態、認知症、てんかん等(ICD-10第5章、第6章の一部)-通知に規定された精神疾患・脳器質性障害に該当するため。
280精神科入院・通院精神療法等認められない-不随意運動、失語症、自律神経失調症、脳血管障害後遺症、更年期症候群等通知の精神疾患の要件に該当しない。
347精神科専門療法片頭痛等に対する心身医学療法の算定①認められる ②認められない①心身症としての身体疾患(片頭痛・胃潰瘍等)は可。②精神障害(うつ病・パニック障害等)は不可。

支払基金・国保統一事例:精神科療法の算定基準と医学的妥当性の解説

1. 精神科審査における特有の視点

精神科領域の診療報酬審査においては、患者の主訴だけでなく、**「標準的な治療指針(ガイドライン)への適合性」「多剤処方の適正化」**が最大の焦点となります。特に、通院精神療法と多剤処方の制限、および特定の管理料の算定要件については、画一的な審査が行われる一方で、個別の症状詳記による医学的判断の余地も残されています。


2. 精神科専門療法・医学管理の算定ポイント詳説

① 通院精神療法と再診料の算定ルール

  • 算定の基本姿勢
    • 通院精神療法は、精神科を標榜する保険医療機関において、精神科を専攻する医師が、患者に対して一定時間以上の対面診療を行い、精神医学的評価に基づいた治療を行った場合に算定されます。
  • 「診察時間」の厳格化
    • 30分以上、または60分以上といった時間区分に基づく算定については、診療録(カルテ)への開始時刻・終了時刻の記載が不可欠です。審査においては、複数の患者に同一の開始時刻が記載されている場合や、明らかに物理的に不可能な人数を診察している場合は、査定の対象となります。
  • 再診料との併算定
    • 電話再診時における通院精神療法の算定は原則として認められません。対面での非言語的コミュニケーションを含めた評価が求められるためです。

② 精神科多剤投与に関する制限と減算(実務上の最重要点)

精神科において最も査定・減算のリスクが高いのが、多剤処方に関連する規定です。

  • 多剤投与の定義と制限
    • 1処方につき、以下の数を超えて投与した場合は「精神科多剤投与」として処方せん料や調剤料、さらには再診料(精神科継続外来再診料)が大幅に減算されます。
      1. 抗精神病薬:3種類以上
      2. 抗不安薬:3種類以上
      3. 睡眠薬:3種類以上
      4. 抗うつ薬:3種類以上
  • 審査の運用と例外規定
    • 認められるケース(例外): 薬剤の切り替え(クロスオーバー)期間中である場合(原則3ヶ月以内)。この場合、レセプトのコメント欄に「○月○日より薬剤切り替えのため一時的な多剤投与」といった詳記が必要です。
    • 認められないケース: 漫然と4種類以上の抗精神病薬を数ヶ月にわたり投与し続けている場合。医学的な特殊事情(難治性等)の記載がない限り、一律に減算対象となります。

③ 認知症関連の医学管理・検査

  • 認知症専門診断管理料
    • 認知症の疑いがある患者に対し、鑑別診断を行い、療養計画を策定した場合に算定されます。
    • 審査ポイント: 画像診断(MRI/CT)や神経心理学的検査(MMSE/HDS-R等)の結果に基づいた診断プロセスが評価されます。単なる「物忘れ」病名での算定は認められず、詳細な検査結果の裏付けが求められます。
  • 抗認知症薬の併用(ドネペジルとメマチン等)
    • 中等度以上のアルツハイマー型認知症において、作用機序の異なる抗認知症薬(ChE阻害薬とNMDA受容体拮抗薬)の併用は、ガイドライン上も推奨されており、原則として認められます。

3. 精神科における投薬・注射の審査事例

① 向精神薬の適応外使用と審査

  • 抗てんかん薬を気分安定薬として使用する場合
    • バルプロ酸やラモトリギンなどは、てんかん以外に「双極性障害」の適応を持っていますが、カルバマゼピン等を他の精神疾患に使用する場合、添付文書上の効能と病名が一致している必要があります。
  • 副作用に対する薬剤(副作用止め)
    • 抗精神病薬による副作用(手震え、錐体外路症状)に対するビペリデン(アキネトン等)の投与。
    • 判断: 抗精神病薬の投与が確認できれば、原則として認められます。ただし、副作用が出ていない段階からの予防的な投与については、必要性が問われることがあります。

② 抗精神病薬持効性注射剤(LAI)の算定

  • LAI(リスパダールコンスタ、ゼプリオン等)の導入
    • アドヒアランス(服薬維持)が困難な統合失調症患者に対し、月1回程度の注射で効果を維持する手法です。
    • 審査ポイント: 内服薬からの切り替えプロセスが適切か、投与間隔が添付文書の規定(2週、4週等)を逸脱していないかが厳格にチェックされます。

4. 精神科領域の「検査」に関する留意事項

  • 心理検査(HDS-R、MMSE、WISC等)の頻度
    • 原則: 治療方針の決定や評価のために行われるものですが、短期間(例:毎月)の繰り返し算定は原則認められません。
    • 妥当な頻度: 症状に大きな変化があった場合や、半年〜1年程度の経過観察後の再評価などが一般的です。
  • 血中薬物濃度測定(リチウム、バルプロ酸等)
    • 有効血中濃度域が狭い薬剤や、毒性が懸念される薬剤の管理において。
    • 判断: 治療開始時や用量変更時、または中毒が疑われる際の算定は認められますが、病態が安定している状況での過度な頻回測定は査定の対象となります。

5. 審査を通過するための実務的対応と「詳記」の書き方

精神科レセプトにおいて、査定を回避するための最重要ポイントは以下の通りです。

  1. 多剤処方の「理由」を具体化する
    • 「難治性につき多剤を要する」という定型句だけでなく、「過去に単剤治療を試みたが幻覚妄想の消失に至らなかった」「錐体外路症状のため高用量単剤が困難」といった、**「なぜ標準的な治療(単剤・少剤)では不十分なのか」**というプロセスを記載します。
  2. 病名の整合性を確認する
    • 例えば、抗うつ薬を処方しているのに「適応障害」のみの病名である場合、重症度によっては「うつ病」への移行を疑われます。薬剤の効能に合わせた正確なICD-10コード(Fコード)の選択が重要です。
  3. 初診時のプロセスを詳記する
    • 精神科初診料およびその加算(時間外や紹介状等)の算定にあたっては、初診時に要した時間や、他院からの紹介内容、過去の治療歴の把握についてカルテおよびレセプトに反映させます。

6. まとめ

精神科の審査事例は、患者のQOL向上と同時に、**「薬物療法の適正化(減薬)」**という国の方針を強く反映しています。 支払基金の統一事例では、単に算定を制限するだけでなく、「医学的に見てこれ以上の多剤はリスクが高い」あるいは「この検査はこの頻度で十分である」というコンセンサスが示されています。

特に令和6年度以降の診療報酬改定では、リフィル処方せんの活用や、長期処方の制限(特定疾患処方管理加算の見直し)など、精神科診療に直結する変更が多く含まれています。本資料の指針をベースに、個々の患者の重症度に応じた**「納得感のある詳記」**を心がけることが、適正な診療報酬の確保には不可欠です。

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