手術の一般的な取り扱い

取り扱い関係

番号区分項目名取扱い根拠・ポイント
5手術組織拡張器による再建手術部位ごとに算定可同一疾患であっても、医学的に部位ごとに組織拡張器が必要と判断できれば各々算定可能。
6手術虫垂切除術「2」周囲膿瘍を伴うもの条件付きで認める膿瘍の病名、コメント、洗浄液の使用や排液ドレーンがある場合に認められる。
7手術シリコンチューブ(涙嚢鼻腔吻合術等)認めないブジー付チューブを涙嚢鼻腔吻合術又は涙小管形成術に使用した場合は材料費を算定できない。
8手術前腕の両骨骨折に対する個別手術それぞれの算定を認める橈骨と尺骨に対し個別の術式(経皮的と観血的等)を別野で行った場合は各々算定可。
28手術切創への皮膚欠損用創傷被覆材原則認めない切創は通常皮膚欠損を伴わない。被覆材は真皮以上の皮膚欠損部位に使用するもの。
37手術抗癌剤なしの選択的動脈化学塞栓術原則認めない抗癌剤を使用しない場合は「その他のもの」で算定すべき。TACEとTAEは区別される。
71手術IABPと冠動脈形成術の併算定原則認める心原性ショック等の治療目的で同日にIABPとPCI等を行った場合は、併算定可。
72手術新鮮凍結血漿輸注時の検査加算原則認めないFFPは赤血球を含まないため、交叉試験、不規則抗体検査等の加算は算定不可。
73手術腸に対するタコシール原則認めないタコシールの適応は肝・肺・心血管・産婦人科・泌尿器のみ。腸は対象外。
74手術内視鏡手術時の穿刺針材料原則認めない食道静脈瘤硬化療法用穿刺針を、胃・大腸ポリープ切除等で算定することは不可。
75手術四肢血管拡張術等のガイドワイヤー原則認めないPTCA用ガイドワイヤーは冠動脈用。下肢血管や胆管・尿管の手術での算定は不可。
76手術下肢静脈瘤焼灼術のシースセット条件付きで認める「一般用」はOK。選択的導入用、大動脈用、遠位端可動型などは目的外で不可。
77手術血管塞栓術の肝動脈塞栓材原則認めない「肝細胞癌」に対する塞栓療法以外(脾臓、腎臓、骨盤骨折等)での使用は不可。
103手術院内感染防止措置加算原則認めるHBVキャリア又はHCVキャリア(抗原・抗体陽性)が対象。慢性肝炎又は肝硬変病名のみでは要件合致の判断ができないため不可。
104手術真皮縫合加算原則認めない眼瞼、趾、手掌、指(露出部であっても)は対象外。真皮層が薄い、あるいは神経損傷の回避が必要な部位であり通常行われないため。
105手術自己血輸血時の間接クームス等原則認めない自己血輸血時は本人確認が適正に行われるべきであり、不適合輸血を防ぐための検査の保険診療上の必要性は低いため。
118手術砕石バスケットなしの胆道砕石術原則認めない砕石用バスケットの算定がなく、かつ電気水圧衝撃波や把持鉗子等で破砕した旨の詳記(コメント)もない場合は算定不可。
119手術腹膜透析カテーテルの抜去創傷処理で算定原則として「創傷処理(筋肉、臓器に達するもの)」で算定する。腹腔に通ずる「腹壁瘻手術」による算定は認められない。
120手術頭部・眼瞼への創傷処理(筋層)原則認めるこれら部位の筋肉は薄い表皮に覆われており、容易に筋肉まで達する。機能を保つための筋層縫合が必要とされるため。
121手術術後出血への試験開胸・開腹術条件付きで認める手術当日の止血再手術は不可。手術翌日以降の出血に対する再開胸・再開腹による止血術は試験開胸・開腹術で算定可。
122手術組織接着剤(ベリプラスト等)条件付きで認める硬膜切開、弁形成、腹腔鏡下手術は可。単なる止血目的の使用や、指の創傷、乳房切除術等での使用は認められない。
123手術骨移植術(同一手術野)原則認める同一手術野からの局所骨採取であっても、告示のただし書き(神経・骨・植皮等の移植)に基づき、それぞれの点数を合算できる。
124手術骨セメント(人工関節用)原則認める人工骨頭挿入術での固定や、人工関節置換術後の二次感染に対する抗生剤含有セメントの使用は認められる。
182手術挫創に対するデブリードマン加算原則認める挫創は汚染を伴うのが通例であり、摘要欄に汚染の明示がなくても通常麻酔下で行われる程度の清拭・切除があれば算定可。
183手術創傷処理の算定可否(病名別)条件付きで認める開放性損傷(挫創・切創等)や手術創離開、褥瘡の壊死組織切除は可。非開放性損傷である「挫傷」は対象外のため不可。
184手術肋骨骨折への骨折非観血的整復術原則認めない肋骨骨折は通常、徒手整復を行わず固定術(絆創膏等)を行うため、骨折固定術で算定すべきであり整復術は不可。
185手術頭蓋内手術翌日以降の試験開頭術原則認める術後血腫除去に対する適切な点数がないため、その手技内容から試験開頭術として算定することが妥当と判断されるため。
186手術下肢静脈瘤への大伏在静脈抜去術原則認める「大伏在静脈」の病名や抜去の詳記がなくても、下肢静脈瘤の標準的術式として算定可能(傷病名マスター上も共通のため)。
187手術ERCP後の膵炎予防目的の膵管ステント原則認めないガイドライン上、予防的留置は高リスク患者に限定されており、全症例一律の予防目的実施は保険診療上適切ではないため。
188手術膵疾患なしの胆道ステントと膵管ステントの併算定原則認めない膵疾患がない場合、膵管ステントは予防目的(同一病巣の複数手術)とみなされ、主たる手術のみの算定となるため。
189手術内視鏡的大腸ポリープ切除の再算定条件付きで認める外来では前回から2週間未満は不可、1か月以上経過は可。2週間〜1か月間は個別の医学的判断(詳記等)による。
200手術食道狭窄拡張術の再算定(外来)条件付きで認める穿孔リスクを考慮し、組織修復に必要な期間として前回から2週間以上経過していれば可。2週間未満は原則不可。
249手術アミドトリゾ酸(ウログラフイン)原則認められない経皮的冠動脈形成術(PCI)など血管内投与の適応がなく、高浸透圧のため不適切。
282手術網膜光凝固術(特殊)認められない-網膜裂孔(「1 通常のもの」で算定)「2 特殊なもの」は裂孔原性網膜剥離や糖尿病網膜症等が対象。網膜裂孔は該当しない。
283手術吸引留置カテーテル2本認められる乳房部分切除(郭清あり)、乳房切除、拡大乳房切除等(腋窩郭清を伴うもの)-腋窩や胸壁への留置により、術後ドレナージとして2本必要とされることが多いため。
312手術麻酔なしの小児創傷処理等認められる小児創傷処理(筋肉に達しない小範囲)、皮膚切開術(10cm未満)-ステープラー使用や小範囲切開では麻酔不要な場合や、少量の局所麻酔で使用薬剤が低薬価のため算定されない場合がある。
313手術ソナゾイド(ペルフルブタン)認められる肝悪性腫瘍マイクロ波凝固法、ラジオ波焼灼療法-局所治療時の治療ガイド(位置把握)や効果判定に有用。
313手術ソナゾイド(ペルフルブタン)認められない-胆のう炎、胆管炎、脾臓炎、膵疾患に対する超音波内視鏡肝臓・乳房以外(胆道・脾・膵)には適応がない。
351手術透析シャント狭窄・閉塞に対するカテーテル等の算定本数原則1本まで認められるPTAバルーンカテーテル(一般型)及びガイドワイヤーが対象。
352手術組織接着剤(タコシール・ボルヒール等)の2種以上併算定①認められる ②認められない①シート状(タコシール)と液状の併用は可。②液状同士(脳外科硬膜手術時)の併用は不可。
353手術体外式連続心拍出量測定用センサーの算定心疾患・ショック・大量出血等以外は不可血行動態を把握する必要性が高い特定の患者群に限定。
354手術内視鏡的胃切除術等における胃内粘液溶解除去剤の算定原則認められるプロナーゼMSが対象。術野・視界の確保に有用。
420手術手術時のランジオロール(オノアクト)の算定不整脈病名がない場合不可本剤は頻脈性不整脈に対する緊急処置用であり、病名がない場合は適応外。
441手術静脈瘤治療時のトロンビン内服(散布)原則認められる食道・胃静脈瘤の硬化療法や結紮術において、病巣部からの滲血性出血に対する止血に有用。
469手術PCIと腎・四肢血管拡張術の併算定原則認められる治療対象(冠動脈vs腎・四肢動脈)および部位が異なるため、同一日の併算定は認められる。
470手術冠動脈に対する複数手技の併算定原則認められないPCI(風船)、ステント、粥腫切除(カッター)は同一病変への一連の治療であり、併算定不可。

支払基金・国保統一事例:手術項目の算定基準と医学的妥当性の解説

1. 手術審査の基本原則:主たる手術と一連の行為

手術の診療報酬審査において最も重要な原則は、**「同一術野(切開範囲)において複数の手術が行われた場合、主たる手術(点数の高いもの)のみを算定する」**というルールです。

例えば、ある臓器を切除する過程で行われる周囲の組織の剥離や止血、あるいは単純な縫合は、すべてその「手術(主たるもの)」の点数に含まれるとみなされます。審査では、レセプトに複数のKコード(手術コード)が並んでいる際、それらが独立した行為(別個の切開や別の目的)なのか、それとも一連の行程なのかが精査されます。


2. カテゴリー別:手術の算定ポイント詳説

① 皮膚・皮下組織の手術(創傷処理・デブリードマン)

  • 創傷処理とデブリードマンの併算定
    • 原則: 創傷処理(縫合)を行う際、単に傷口を洗浄したり、ごく一部の壊死組織を除去したりすることは創傷処理の点数に含まれます。
    • 審査ポイント: 「K002 デブリードマン」を別途算定するためには、単なる清拭を超えた、汚染組織の広範な除去という医学的事実が必要です。審査では、創傷の汚染度や処置の複雑さが問われます。
  • 皮膚欠損用人工皮ふ(J000等に関連)
    • 留意点: 手術に伴い人工皮膚を使用する場合、その面積が手術の規模と整合しているか、また「真皮欠損用グラフト」等の材料加算が、通知上の適応疾患(重症火傷や難治性潰瘍など)に合致しているかが確認されます。

② 消化器系の手術(内視鏡下手術と開腹術)

  • 内視鏡下手術から開腹手術への移行
    • 判断: 腹腔鏡下で手術を開始したものの、癒着や出血により開腹手術に切り替えた場合、両方を請求することはできません。この場合は「最終的に完遂した術式(開腹術)」のみを算定するのがルールです。
  • 腹腔鏡下胆嚢摘出術と胆管造影
    • 原則: 胆嚢摘出に伴う胆管造影は、一連の行為として含まれる場合があります。個別に算定する際は、総胆管結石の疑いなど、造影を行うべき医学的必然性が「疑い病名」等で示されている必要があります。

③ 循環器・血管系の手術(カテーテル手術・血管内手術)

  • 経皮的冠動脈ステント留置術(K695-2)
    • 審査ポイント: 使用されたステントの個数と、治療した血管の枝数が精査されます。同一部位に対する過剰なステント留置は、医学的妥当性が疑われる対象となります。
    • 画像診断との関係: 冠動脈造影(CAG)とステント留置術を同一日に行った場合、CAGの点数は手術の一部として包括されるルールがあるため、併算定には注意が必要です。

④ 整形外科的手術(骨折観血的手術・人工関節)

  • 骨折観血的手術と神経剥離術の併算定
    • 原則: 骨折の手術中に神経を避ける、あるいは保護するための剥離は手術の行程に含まれます。
    • 例外: 神経損傷が明確にあり、治療として独立した「神経縫合術」や「神経剥離術」を要した場合は、別個に算定可能ですが、その損傷の程度を詳記する必要があります。
  • 人工関節置換術(K046)
    • 審査ポイント: 変形性関節症の進行度(Kellgren-Lawrence分類等)が、手術適応を満たす重症度であるかが、レントゲン所見の記載等から判断されます。

⑤ 泌尿器・眼科の手術

  • 水晶体再建術(白内障手術)
    • 原則: 片眼ずつの算定が基本です。両眼を同一日に行う場合の点数計算や、使用する眼内レンズの種類の適応(多焦点レンズ等)が正しく選択されているかが精査されます。
  • 経尿道的低音波等による前立腺切除術
    • 審査ポイント: 前立腺の肥大の程度(重量や排尿障害の数値)が、手術を行うに足りる重症度であるかが確認されます。

3. 手術加算の算定と医学的妥当性

手術料には、多くの「加算」が存在しますが、これらは審査において非常に厳しくチェックされる項目です。

  • 時間外・休日・深夜加算
    • 原則: 予定手術ではなく、「緊急性」がある場合にのみ認められます。
    • 審査ポイント: 疾患名から見て、翌日まで待機可能であったと判断される場合は査定されます。救急搬送の有無や、当日の緊急検査結果など、緊急性を裏付ける証拠が重要です。
  • 輸血加算と自己血輸血
    • 判断: 大量出血が予想される手術において自己血を貯血・使用した場合の加算。実際に使用された血液量と手術中の出血量の記録が整合しているかが問われます。

4. 審査を通過するための実務的対応:詳記(コメント)の重要性

手術のレセプトにおいて、査定を回避し医学的妥当性を伝えるためのポイントは以下の3点です。

  1. 手術記録との整合性
    • 審査委員は、請求された術式と、カルテ上の手術記録(切開部位、剥離の程度、使用材料)を照らし合わせます。特に「Kコード」の選択が難しい複雑な症例では、手術記録の要約を詳記することが推奨されます。
  2. 併算定の理由を明記する
    • 「本来は主たる手術に含まれるが、今回は別部位・別目的である」という場合は、「第2の手術は○○のため別切開にて実施」といった具体的なコメントが必須です。
  3. 材料価格と術式のバランス
    • 高価な特定保険医療材料(人工骨、特殊なカテーテル等)を使用する場合、その材料でなければならなかった理由(解剖学的変異、既往症、難治性など)を添えます。

5. まとめ

「支払基金の統一事例」における手術の取扱いは、**「標準的な外科手技の範囲」**を明確に定義し、それを超える特別な請求に対しては論理的な説明を求めるという姿勢です。

医師の技術料を正しく評価する一方で、不要な重複請求や材料の過剰使用を防ぐ仕組みとなっています。医療機関としては、術式の正しいコード選択はもちろんのこと、**「術中写真やスケッチを含む詳細な手術記録」**を整備しておくことが、将来的な審査や再審査請求において最大の武器となります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました